企業 トヨタ自動車株式会社
ジャンル メーカー
従業員数 370,870名(連結 2019年3月末 現在)

アウトサイドインを「社会課題の解決を起点にしたビジネス創出」と定義すると、実は日本でもこれまで多くの事例があります。その代表格はトヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」と言えます。

トヨタがプリウスを発売したのは1997年12月のこと。そのプロトタイプは1995年の東京モーターショーで発表されましたが、実は社内では開発が遅れ気味でした。

こうした状況で、「何としても97年12月に発売せよ」と号令を掛けたのが奥田碩社長(当時)でした。その理由は、第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)が同月に開催される予定だったからです(COP3では「京都議定書)が採択されました)。プリウスの発表会では「21世紀に間に合いました」という有名なキャッチコピーも披露されました。

その後、プリウスが日本や世界で最も販売台数が多いクルマになったことは言うまでもありません。つまり、「気候変動問題」「地球温暖化」というグローバルな社会課題の解決に寄与することで、メガヒット商品を手にすることができたわけです。

ただ、ハイブリッド車がいつまでも「アウトサイドイン」である訳ではありません。2015年12月に採択されたパリ協定では、今世紀後半の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。

これを受け、フランスやイギリスなどの国は、2040年をメドにエンジン車(ガソリンとディーゼル)の販売を禁止する方針を明らかにしました。そして、これらの国ではエンジン車に代わる「エコカー」の定義にハイブリッド車が入っていないのです。

エコカーとして今後、気候変動対策の主役になるのはEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド)車などです。このように、その時代に応じて、社会課題は変化し、社会ニーズも変化していきます。その変化に対応することがとても大切なのです。

また、アウトサイドインはなにも大企業だけのものではありません。中小企業が編み出したアウトサイドインの事例もこれまでにたくさんあります。

今後は、業種や企業規模を問わず、アウトサイドインの発想を社内に広めて、社会の新たなニーズに対応できる組織をつくることが重要なのです。