2024年2月に、SDGsアウトサイドイン公認ファシリテーターで京都市立紫野高等学校の教師である小林孝由先生が、高校一年生の生徒さんを対象に、SDGsアウトサイドイン・ビジネスゲームを活用した体験学習を開催されました!
小林先生は、「これからを生きる子どもたちに、生き抜く力を身につけてほしい」という思いのもとSDGsアウトサイドインを授業に企画。公民の授業を活用し、SDGsアウトサイドインでできる「ビジネス創出の擬似体験」を通して、より経済・社会を現実に即して学ぶ時間として開催いただきました。
授業終了後に、次の実施レポートを寄せていただきました。
<小林先生からのレポート>
※原文から一部内容を加筆して、掲載しています。
一年生の公共の授業で、社会課題の解決を起点にしたビジネスの創出にはどのような考え方が必要なのかについて学ぶワークショップを開催しました。
生徒たちは10の会社(メーカー、IT、コンサルティング、物流、小売業など)に分かれて、各会社が固有に保有する企業としての財産とビジネスを生み出すのに必要なノウハウを組み合わせて、新たな事業を創造します。しかし、新事業を創造しただけでは利益を生み出しません。新事業の認知を広め、大きくしていくことで初めて資金が得られます。
1回目の授業では、各会社に渡された社会課題カードを読み解き、それを解決するような新事業をどうすれば立ち上げることができるのか、その新事業をどのように広めていくと効果的なのかの仮説を立てました。
「保育中の突然死事故の事例が全国の保育園で年間10件程度あるらしい。うちの会社IT関係だから、アプリ開発とかで解決できるんじゃないかなぁ。」
「うちの会社、情報収集力やオンライン技術の活用で強みがあるから、いけるかも!」
「インターネットで調べてみたら、保育ICT株式会社が幼稚園・保育園向けの保育業務支援システムや睡眠センサーアプリを開発してるらしい!たぶんこれだ!」
「あとは、それをどうやって広めていけるかだね。自治体との連携や政府の支援が必要かも。」
など、生徒たちは会社の社員になりきって議論をしている様子でした!
2回目の授業では、実際に新事業の創出と認知の拡大に向けて、他の会社と競いました。
「キノコ菌床で砂漠緑化ビジネス」
「脱プラスチックの環境に優しい代替素材で海洋保全」
「衛生用品の提供による女性の雇用機会の創出」
「子ども靴の下取りで途上国を支援」
など、生徒たちは様々な新事業を立ち上げ、それを世の中に広めための活動(ブランディング、政府からの支援の獲得、専門家との連携など)を行いました。
授業後、生徒たちに配られていた49枚の社会課題カードについて、それを実際に解決しようとしている49の日本国内の会社が紹介されていました。生徒たちは、社会課題を解決する新事業を生み出し、それを広めるための考え方や行動の仕方について、現実との繋がりを理解し、学びを深めている様子でした♪
<小林先生へのインタビュー>
本ワークショップを授業で開催するにあたって、生徒たちがスムーズに理解できるように、どのような準備をしたのか小林先生にインタビューをしました。ぜひご参考にしてみてください!
- 「SDGsアウトサイドイン」はビジネス創出がテーマで、生徒さんには少し難しい内容もあったと思いますが、どのように準備・フォローをされましたか。
生徒がスムーズに内容に入れるように主に2つの準備を行いました。それは
- 1時間の事前準備、1時間のゲーム体験、1時間の振り返りというように、授業を構成した。
- 49種類の社会課題のデータ、アセット、ソリューションについて、事前準備の時間に詳しく説明し、資料も作成した。
という準備です。
生徒たちは、社会課題や企業活動に関わる経験があまりなく、「アセット」や「ソリューション」「プロモーション」という言葉にも馴染みがありません。そこで、ゲーム中に登場する49種類の社会課題とそれを解決する49の企業活動の事例、「プロモーション」の考え方の資料を用意し、生徒が読む時間を設けました。特に「プロモーション」の考え方と、「アセット」「ソリューション」という用語は生徒たちに馴染みがないため、資料と口頭で説明しました。生徒たちがしっかり事業創造の体験をできるように、疑問はすべて先に解消しておくことが非常に重要だと思います。
その後、1時間をゲーム体験、1時間を振り返りに使い、生徒たちが自分自身で学びを得られるように、十分に時間を取りました。


- 生徒たちの学びを深める「質問」はどのようなことを大事にされましたか。
生徒たちには、「事前準備を大切にしてほしい」ということを普段から伝えています。それは社会人になった時に、事前準備が非常に大切だからです。準備がないと能力があっても活かせないことがほとんどで、仕事の仕組みの理解やゴールを達成するためには準備は重要です。授業では普段から何度も何度も伝えています。そうした視点を「質問」にも入れました。例えば
1.ゲームの開始にあたり、特に意識したいと思っていたことは何でしょうか(継続すること)
2.ゲームの開始前に意識したことで、できたことは何でしょうか?
という内容を質問に入れました。ゲームを終えた時だからこそ、事前の準備や仮説をどれくらい活かせたのかを振り返ります。この視点は自分の行動が結果や学びに繋がる意識を、生徒に強く持たせることができます。また、より良い結果のために「どのように行動すればよかったのか」という質問も多く入れました。例えば
3.ゲームの結果について、なぜ、この結果になったのでしょうか?
4.ゲームを通じてでた自分の強みと改善したいポイントは何でしょうか?
という質問です。自分が出した結果に対して満足したかどうか、していないならどのようにすべきだったのか、という質問で生徒たちに行動を変えるきっかけを作ります。最後に、明日からどのようなことが活かせるのか、という視点の質問をしました。例えば
5.得た「気づき」を活かしていくため、明日から実践できる具体的な行動を言葉にしてみましょう
6.ゲームの中で「現実」との結びつきを感じたことを書いてください
という質問です。「ゲームが楽しかった」「満足した」という感想に終わっては意味がないからです。「生徒自身が考え、行動を変える」ことが非常に重要で、しっかりと意識を変えるきっかけを作るゲームだからこそ、この質問で生徒たちに変わる機会を作ります。生徒からは5.の質問の回答に
「話す前に何を伝えたいのか、一旦自分の中で整理する」
『役割分担が本当に大事だということがわかったので、これから些細なことでも誰が何をしているのかをきちんと理解するようにしたい』
「自分がこの行動をしたら後にどうなるかなど、先のことを考えて行動するべきだと思った。何かグループで活動するときも、状況を把握するのはとても大切だと思う」
といった回答がありました。ゲームを通じで、日々の準備の大切さが結果に出ることをしっかり学ばれたようです!
4月から新年度を迎えるにあたって、新しいテーマが進行中です。
学習指導要領に「生きる力」と言われるように、これから社会に出る生徒さんのために新たな取り組みとして導入いただけたことを大変嬉しく思います。小林先生の次年度の活躍にもぜひ期待しています!
小林先生、ありがとうございました!
<ご案内>
社会課題解決型企業研修「SDGsアウトサイドイン・ビジネスゲーム」をぜひ導入しませんか?
体験ワークショップと養成講座は毎月開催しています。
詳細をチェックいただき、皆様の参加をお待ちしております。
(SDGsアウトサイドインの詳細はこちら)
今後の開催情報は、以下の通りです。(お申し込みはこちら)
「SDGsアウトサイドイン」実践ワークショップ&研究会を開催!
社会課題解決の新事業創出ロジックを学びファシリテーション手法を疑似体験します。
・4月12日(土)13:30〜16:30/オンライン
・5月10日(土)13:30〜16:30/オンライン
・6月14日(土)13:30〜16:30/オンライン
「SDGsアウトサイドイン」公認ファシリテーター養成講座
・4月24日(木)10:00〜17:00/オンライン
・5月29日(木)10:00〜17:00/オンライン
・6月26日(木)10:00〜17:00/オンライン