SDGs Outside-in
公認ファシリテーター氷見栄成さんが
富山第一高校で、高校1年生を対象に
SDGsアウトサイドインカードゲーム体験を実施しました!
2019年12月5日(木)にSDGs Outside-in公認ファシリテーターの氷見さんが、高校1年生を対象に、ワークショップを開催しました。
その様子は地元の北日本新聞、北陸中日新聞に掲載され、テレビでも放映されました。
結果として、「本ゲームは高校1年生にも実施可能であり、キャリア学習にも役立つものと確信しました」と氷見さん。
アウトサイドインカードゲームの活かし方の幅を大きく広げて頂きました。
その実際を、Facebookコミュニティに詳細に投稿されましたので、原稿をお借りして掲載させて頂きました。
実施にあたっての配慮や工夫が臨場感をもって伝わります。
大いに啓発されました。氷見さん、ありがとうございます!!
<氷見さんからのレポート>
※原文のまま。見出しのみ付加しています。
<生徒の皆さんのSDGsの理解>
「総合的な探求の時間」の活動の一環として、7月には「2030 SDGs」を経験しており、生徒はSDGsの本質については概ね理解しています。
また、11月より、『朝の読書』(毎朝10分)の時間帯に『未来を変える目標 SDGs アイディアブック』(Think the Earth)を読んでいます。早い生徒では全部を、比較的読むスピードが遅い生徒でも5割程度を読み終えた段階で、今回のSDGs Outside-inを体験することになります。
<SDGsをテーマとした探究活動の中間発表を控えている>
生徒たちは、3学期初めに「高校生がSDGs達成に向けてできること」というテーマでの探究活動の中間発表を行うことになっています。その中で、高校生が独りでできる取り組み、複数の生徒が集まって取り組むことができる取り組み、そして学校として行うことができることをアイディアとして発表することになります。
<SDGs Outside-inのゲーム体験を通して、アウトサイドイン思考に則った事業創出シミュレーション、実際の企業活動事例を学ぶことを目的とした>
「SDGs達成に向けたアイディアを出す」といっても、イノベーティブなアイディアを創出することは高校生にとっては極めて難しいことです。また、SDGsの達成に向けて日本企業がどのような取り組みをしているかについてもほとんど知る機会がありません。そこで、SDGs Outside-inのゲーム体験を通して、アウトサイドインの思考に則って事業を創出することをシミュレーションするとともに、実際の企業活動の事例を学ぶことを活動の狙いとしました。また、探求のチームとして活動することで、チームビルディングとしての意味もあるのではないかと考え実行しました。
<体験会開始>
ゲーム体験会に先立ち、12月3日(火)のHR時に、20分程度の時間をかけて、SDGsの本質を復習するとともに、ビジネスセクターの役割とアウトサイドインアプローチが社会課題の解決に重要であることを説明。
本時は、ゲームルール説明・ゲーム体験・振り返りシートへの記入を90分で実施。
チーム数:10(34名)
時間:
前半 調査・検討(6分)→行動(14分)
後半 調査・検討(6分)→行動(14分)
結果: 前半[億円](事業)→ 後半 順位
0 :コンサルティング12 (1) 17 (2) 9位
1 :化学 18 (2) 16 (2) 4
2 :製造 6 (1) 17 (4) 1
3 :商社 11 (1) 17 (2) 1
4 :金融 10 (1) 3 (2) 10
5 :エネルギー 18 (1) 14 (2) 5
6 :IT 20 (2) 17 (2) 5
7 :飲食 16 (1) 13 (1) 6
8 :小売 6 (1) 12 (2) 7
9 :人材 10 (1) 9 (2) 8
特徴:
・運動部員のチャレンジングなチームは、次々とアクションをおこしました。失敗を恐れず、事業創出に次々と挑みました。カード組み合わせにおいて、個人のwillを大切にする雰囲気もあり、他チームとの交渉を行いながら、事業創出・広報ともに挑戦し続けることで、一度は下がった業績も後半で回復しました。
・前半に大きな利益をあげた比較的大人しい雰囲気の男子チームは、他チームとの交渉が少ないため、後半は事業の創出に失敗することが増えました。結果として資金トップの座から陥落しました。同じ組み合わせのカードをもってくることもありました。振り返りでは、他チームとの協業の重要性を学びました。
・金融業の女子チームは、最後まで座席から動くことが少なく、自分たちのカードだけで何とかやりくりしようとし続けました。さらに、「プロモーションは1回のみ」という説明を聞き忘れて、何度もプロモーションを行おうとしました。それにより時間をロスしてしまい、焦って適当な組み合わせで事業を起こそうとするも失敗が続きました。結果、手持ち資金を大きく減らしてしまい、ー12億円(最終資金3億円)と大損失に至ってしまいました。
・社会課題カードの読み込みが丁寧で、慎重ながらも確実に事業創出とプロモーションを行ったチームが複数ありました。いずれも事業の成功と失敗を繰り返しながらも、概ね15億円前後に保つことができました。
生徒の特徴:
進路多様校なので、私が担当するクラスでは、高校卒業後に就職する生徒が約2割となります。ゲームルールが高校生にとって難しいと思われたため、よりわかり安くするためにスライドを作り込みました。「学校」を例に上げながらアセットとソリューションの説明をしました。例えば、アセット(強み・資源)は、学校で例えれば教育環境や部活動のコーチ陣などが相当します。ソリューションは、進路指導における経験値や、部活動における指導経験に相当します。これが功を奏し、生徒は事業創出について概ね理解することができたようです。一方、広報についての説明が充分には伝わらず、同じプロモーションカードを数回持ってきた生徒がいました。説明が長くなると、後半の集中力が低下するようです。やはり、ワークショップ開始からなるべく早くゲームに到達したほうがよいと思いました。
テレビ局のインタビューに対する応答の様子を見ていると、このワークショップが強く印象に残ったようです。
このワークショップの実施から、本ゲームは高校1年生にも実施可能であり、キャリア学習にも役立つものと確信しました。
<振り返り・マトリックスワーク実施へ>
次の回で振り返りを行い、Outside-inマトリックスも活用する予定です。
振り返り① 通常の振り返り+「分解」マトリックスワーク
12月7日(金)と10日(火)の実施
アウトサイドインワークショップの通常版振り返りに加え、独自のワークを実施しました。
高校生に「文章で記録しなさい」と指示すると、仲間の目を見て話を聞かずにひたすら書き始める生徒もでることがあるので、「キーワードを3つ記しましょう」とハードルを下げました。
以後に、独自の SDGs Outside-in 振り返りのワーク内容を共有します。
Think the Earthさんの『SDGs アイディアブック』にはグラミン銀行の事例が掲載されています。それを題材に、アウトサイドインマトリックスを活用し、ユヌス氏のアイディアからもとの要素を分割して見出すワークを実施しました。
次回は「学校の強み・資源」✕「学校のソリューション」という視点での、SDGs達成アイディアを創出するというワークを行う予定です。アウトサイドインマトリックスの正式な活用ですね。
振り返り② アウトサイドインマトリックス
先日のゲーム体験から続く、振り返りの最終フェーズです。
前回は『SDGs アイディアブック』のグラミンバンクの事例を、マトリクス図を使って「分解」するワークを行っています。「アイディアが既に存在するモノやコトの組み合わせです。社会課題の解決に貢献している事例を『分解』して考えてみることで、アイディア創出の練習になります」として、取り組ませました。
今回は、Outside-inマトリクスを活用した、「富山第一高校」としての社会課題解決事業創出ワークを行いました。
① 朝礼時の10分間、学校案内をもとに「学校の強み」を考え、アセットカード(記入できるようにしたものをつくりました)にキーワードあるいは文章で記入します。休み時間に、各自2枚作っておくように指示しておきました。
② また、休み時間を活用し、先生方に「学校の強み」をリサーチするように指示しました。
③ 用意したアセットカードから3つを選び出し、マトリクス図に貼り付けました。
④ あらかじめ探究活動のテーマとしていたゴールを3つ貼り付けるよう指示しました。
⑤ それをもとに、アイディア創出ワークに取り組ませました。
④までは順調に進んだのですが、⑤のアイディア創出となると、流れが止まりました。ブレストの経験がない生徒たちなので、ルールにしたがって効率よく取り組めたのは半分以下でした。
活動が停滞する中で気づいたのですが、やはり「関係性の質」は、最終的に「結果の質」に結びつくということです。
ゲームのときに女子チームの一部がうまく事業を創出できず資産を失っていたのですが、今回のワークでも同じような雰囲気で流れが止まっていました。やはり思考の質→行動の質→結果の質につながるんですね。
それでも、何人かの生徒にSDGsの本質とアウトサイドインアプローチの意義が伝わったのは確かであり、それらの生徒の後押しをすることがこれから大切なのだと思っています。
以上、高校開催の報告でした。